倉庫に眠っているトラクターやコンバイン、動かなくなった耕運機。処分に費用をかける前に知っておきたいことがあります。日本の中古農業トラクターは、2025年の1年間で53,911台・約194億円が海外へ輸出されています(財務省貿易統計を当サイトで集計)。
しかも輸出先は、トラックや建設機械とはまったく違います。ベトナムが最多である一方、ポーランド・ブルガリア・リトアニア・オランダ・フランスといった欧州が上位に並びます。日本の小型トラクターは、欧州の小規模農家や果樹園で「ちょうどいいサイズ」として求められているのです。
この記事では、機種別の買取相場、JA(農協)と専門業者のどちらに売るべきか、動かない農機具の扱い、離農・相続でまとめて処分する場合の考え方までを、公的統計と業者16社の実測データに基づいて整理します(実測の全項目比較はトラック買取おすすめ業者16社比較、集計手順は調査方法に公開しています)。
結論: 農機具の売り先は3択【状況別の早見表】
農機具の売り先は、大きく3つに分かれます。状況に応じて選んでください。
| あなたの状況 | 適した売り先 | 理由 |
|---|---|---|
| 相場を知りたい/複数社を比べたい | 一括査定(農機具買取査定君など) | 1回の入力で最大5社の見積が集まる。相場の把握が最短 |
| 農機具とトラック・重機をまとめて処分したい | トラックファイブなどの全機種対応業者 | 引取と手続きを一本化できる。全国11支店で当日現金化 |
| 新しい機械への買い替えと同時に処分したい | JA(農協)・農機店の下取り | 手続きが1か所で完結。ただし査定は控えめになりやすい |
判断の軸はシンプルです。手間を最優先するならJA・農機店の下取り、金額を優先するなら買取業者の相見積。その差がどれくらいかは、後述のJA比較の章で整理します。
農機具の買取相場【機種別の目安】
農機具の相場は機種と馬力(またはクラス)で大きく変わります。以下は買取各社が公開する相場情報を当サイトで突き合わせた目安です(2026年8月時点)。
| 機種 | 買取相場の目安 | 相場を左右する主な要素 |
|---|---|---|
| トラクター | 1万〜255万円 | 馬力、アワーメーター、キャビン有無、四駆 |
| コンバイン | 1万〜70万円(新しめは100万円超も) | 条数、アワーメーター、刈刃の状態 |
| 田植機 | 1万〜100万円 | 条数、乗用/歩行、施肥機の有無 |
| 管理機・耕運機 | 1万〜15万円 | エンジンの始動性、爪の摩耗 |
| 草刈機・刈払機 | 数千円〜数万円 | 動作の可否、メーカー |
| その他(乾燥機・籾摺機・精米機など) | 数万円〜数十万円 | 処理能力、設置状態 |
トラクターは馬力とアワーメーターで桁が変わる(詳細はトラクター買取相場【馬力別】)
農機具のなかで最も単価が大きく、20〜30馬力の小型で数十万円、50馬力以上の中型では100万円を超えることもあります。アワーメーター(稼働時間)が1,000時間以下なら高年式でなくても評価されます。詳しくは後述の輸出データが示すとおり、小型トラクターは海外需要が最も厚い機種です。
コンバイン・田植機は「条数」が価格を決める
コンバインは2条・3条・4条・5条、田植機は4条・5条・6条というように、一度に処理できる列数で価格帯が分かれます。条数が大きいほど高値ですが、その分だけ買い手(大規模農家)が限られます。
管理機・耕運機・草刈機は「まとめて」が基本
単体では数千円〜数万円のクラスです。1点ずつ売ると引取コストのほうが大きくなるため、倉庫にあるものをまとめて査定に出すのが実務的です。
メーカー別の傾向
農機具は国産4メーカーの評価が高く、海外でも指名買いされます。
| メーカー | 傾向 |
|---|---|
| クボタ | 国内シェア最大。海外でも知名度が高く、中古市場で最も安定した評価 |
| ヤンマー | 耐久性の評価が高い。小型トラクター・管理機の需要が厚い |
| イセキ(井関農機) | 稲作機械に強み。コンバイン・田植機で評価される |
| 三菱マヒンドラ農機 | 流通量は上記3社より少ないが、実用需要は同じ |
海外メーカー(ジョンディア、ニューホランド等)は国内での部品供給網が限られるぶん、国産より査定が抑えめになる傾向があります。
型式は機体の銘板(プレート)に記載されています。型式・アワーメーター・年式の3点を控えておくと、電話やフォームだけで概算が出ます。
日本の中古農機は年5.4万台が海外へ【輸出の実数】
「もう20年以上前の機械だから値段はつかない」——農機具ではこの常識が通用しません。理由を、公的統計の実数で示します。
当サイトが財務省貿易統計(2025年)を集計したところ、日本から輸出された中古の農業用トラクターは53,911台・約194億円。平均輸出単価は1台あたり約36万円でした。
| 馬力区分 | 年間輸出台数 | 金額 | 平均単価 |
|---|---|---|---|
| 〜24馬力(18kW以下) | 37,688台 | 約105億円 | 28万円 |
| 24〜50馬力(18〜37kW) | 14,294台 | 約73億円 | 51万円 |
| 50〜100馬力(37〜75kW) | 1,851台 | 約15億円 | 78万円 |
| 100馬力超 | 78台 | 約1億円 | − |
| 合計 | 53,911台 | 約194億円 | 36万円 |
出典: 財務省貿易統計・品別国別表(2025年・統計品目8701.91-110〜8701.95-110)を当サイト集計
輸出先は「ベトナム+東欧」。トラックや建機とまったく違う
さらに注目すべきは輸出先です。
| 順位 | 輸出先 | 台数(全馬力帯の合計) |
|---|---|---|
| 1 | ベトナム | 約17,255台 |
| 2 | ポーランド | 約4,032台 |
| 3 | ブルガリア | 約3,305台 |
| 4 | オランダ | 約2,328台 |
| 5 | リトアニア | 約2,268台 |
| 6 | フランス | 約1,768台 |
当サイトは同じ手法で中古トラック(フィリピン・UAE・アフリカが中心)と中古建設機械(ベトナムなど東南アジアが中心)の輸出先も集計していますが、農機だけは欧州が主要市場という明確な違いがあります。
理由は機械のサイズにあります。日本の農地は区画が小さいため、20〜30馬力クラスの小回りの利くトラクターが主流です。この「小さくて頑丈で壊れにくい」機械が、東欧の小規模農家やオランダ・フランスの果樹園・施設園芸で重宝されています。大型機が主流の欧米市場において、日本の小型機は競合しないニッチを埋めているわけです。
国内市場は縮小、海外需要は健在
国内では農業従事者の減少にともない、農機具の買取需要そのものは縮小傾向にあります。しかし海外では年5.4万台の実需がある——この差が、「国内では値がつかないと言われた機械に、輸出販路を持つ業者は値をつけられる」理由です。
古い機械の査定を依頼するときは、海外への販路を持っているかどうかを業者選びの基準にしてください。
JA(農協)と専門買取業者、どちらに売るべきか
農機具の売却で最も多い迷いがこれです。両者は仕組みが違うため、向き不向きがはっきり分かれます。
| 比較項目 | JA(農協)・農機店の下取り | 専門買取業者 |
|---|---|---|
| 手続きの手間 | 少ない(買い替えと同時に完結) | 査定依頼と引取日の調整が必要 |
| 査定額 | 控えめになりやすい | 相見積で競争が働く |
| 販路 | 主に国内の中古流通 | 国内+海外(前章の輸出市場) |
| 古い機械・不動品 | 値がつきにくい/引取のみになることも | 部品取り・輸出で値がつくことがある |
| 引取 | 農機店が対応 | 全国出張・無料の業者が多い |
| 支払い | 買い替え代金と相殺されることが多い | 現金または振込 |
JAが向いているケース
- 新しい機械への買い替えと同時に処分する場合。下取り価格が値引きと一体で提示されるため、総額で見ればメリットが出ることがあります
- 普段から取引があり、機械の整備履歴を把握してもらっている場合
- 手続きに時間をかけたくない場合
専門買取業者が向いているケース
- 買い替えを伴わない処分(離農、規模縮小、相続)
- 古い機械・動かない機械。前章のとおり海外に販路があるため、国内基準で「値がつかない」とされた機械にも査定が出ます
- 複数台をまとめて処分する場合。台数効果で条件が良くなります
両方に見積を取るのが確実
現実的な進め方は、JA・農機店の下取り額を聞いたうえで、買取業者の査定も取って比較することです。下取りは値引きと一体になっていて金額が見えにくいため、「下取りなし・値引きのみ」の条件も出してもらうと比較しやすくなります。
動かない・壊れた農機具は売れるのか
「エンジンがかからない」「田植機の爪が折れている」「20年以上倉庫で眠っている」——この状態でも、買取対象になる可能性は十分あります。
理由1: 部品取りの需要がある
農機具は同じ型式が長期間生産され、現役で使われている機械も多いため、中古部品の需要が絶えません。エンジン、ミッション、油圧ポンプ、爪などは単体で再利用されます。
理由2: 海外では修理して使う
前章のとおり、日本の中古トラクターは年5.4万台が輸出されています。人件費の安い国では、日本で「修理費が高くつく」と判断された機械も直して現役に戻ります。
理由3: 鉄としての価値が残る
最終的には金属資源としての価値があります。処分費用を払うより、引き取ってもらう方に振れることが多いのが実情です。
動かない農機具を売るときのポイント
- 状態を正直に伝える(エンジン不動、油漏れ、爪の欠損など)。後からの減額を防げます
- 保管場所と搬出経路を伝える(倉庫の奥、農道しかない等)。引取方法が変わります
- 付属品・アタッチメントも一緒に(ロータリー、プラウ、ハロー、作業機は本体と同時が有利)
農機具を高く売る7つのコツ
コツ1: 農閑期の前に売る
農機具の需要は作付けのサイクルと連動します。春の作付け前(2〜4月)と秋の収穫前は、すぐ使える中古機を探す買い手が増える時期です。使わないと決めたら、この時期に合わせて動くと有利です。
コツ2: アタッチメント・作業機は一緒に出す
ロータリー、プラウ、ハロー、畦塗り機、ブロードキャスター。トラクター本体とセットで出すと「すぐ作業に入れる」状態として評価されます。別に処分するより総額が上がるのが通例です。
コツ3: 型式・アワーメーター・年式を控える
この3点で概算が出ます。銘板の写真を撮っておくと、電話でもメールでも話が早く進みます。
コツ4: 洗浄はする、修理はしない
泥や作物の残りを落として、機体の状態が見える状態にしてください。一方でエンジンや油圧の修理は費用が査定の上昇分を上回るのが通例です。
コツ5: 整備記録・取扱説明書を揃える
整備の履歴がある機械は「管理されていた」と判断されます。取扱説明書は次の使用者にとって実用価値があるため、付けておくとプラスです。
コツ6: 倉庫の農機具をまとめて査定に出す
管理機、草刈機、噴霧器、小型の作業機は単体では安いですが、まとめれば引取コストが分散され、全体の条件が良くなります。
コツ7: 2〜3社の相見積を取る
古い機械ほど、業者の販路によって査定差が開きます。とくに海外販路の有無で数万円〜数十万円変わることがあるため、一括査定で複数社の初期提示を集めるのが効率的です。
離農・相続でまとめて処分する場合
近年増えているのが、離農や相続をきっかけとした一括処分です。進め方には順序があります。
ステップ1: 何があるかを洗い出す
トラクター、コンバイン、田植機、管理機、草刈機、作業機(ロータリー等)、乾燥機・籾摺機、倉庫の工具類。リスト化して写真を撮るところから始めてください。買取業者はこのリストだけで概算を出せます。
ステップ2: 「買取」と「処分」を分ける
すべてに値がつくわけではありません。値がつくもの(買取)と、費用を払って処分するものを切り分けると、手残りが最大化します。買取業者に一括で見てもらえば、この仕分け自体を任せられます。
ステップ3: 名義と所有関係を確認する
相続した農機具の場合、名義が故人のままでも、ナンバーのない農機具は動産として相続人の合意で売却できるのが一般的です。ただし公道を走るためにナンバー(小型特殊・大型特殊)を取得しているトラクターは、自動車と同様の手続きが必要になります。
ステップ4: 倉庫や納屋ごと相談する
農機具だけでなく、倉庫の工具・予備の部品・軽トラックまで含めて処分したいケースも多くあります。トラック・重機・農機具を全機種扱える業者なら窓口を一本化できます(軽トラックの相場は軽トラ買取相場で解説しています)。
買取業者の選び方と対応業者
選び方の4基準
- 海外販路を持つか(古い機械の査定額を左右する最大の要素)
- 不動品・部品取りに対応するか
- 出張査定・引取が無料か(農村部では引取コストが効きます)
- まとめて引き取れるか(複数台・工具類も含めて)
対応する主な業者
| 業者 | 特徴 |
|---|---|
| 農機具買取査定君 | 最大5社の一括見積。全国対応。まず相場を知りたい段階に向く |
| トラックファイブ | トラック・重機・バス・農機具まで全機種対応。全国11支店・最短当日現金 |
| 工具の買取屋さん | 工具・農機具・重機に対応。ただし出張エリアは関東〜九州の一部に限定 |
| 農機具専門店(農機具王・農機具高く売れるドットコム等) | 農機具に特化。機種別の実績が豊富 |
当サイトが実測した16社のうち、農機具まで対応するのはトラックファイブのみでした(トラック・重機系の業者は農機具を扱わないことが多いため、農機具専門業者と併せて相見積を取るのが実務的です)。
手続きと注意点
ナンバーの有無で手続きが変わる
| 区分 | 手続き |
|---|---|
| ナンバーなし(構内・農地専用) | 動産の譲渡。譲渡証明書と印鑑で完了 |
| ナンバーあり(小型特殊・大型特殊) | 市区町村または運輸支局での廃車・名義変更手続きが必要 |
公道を走るために小型特殊のナンバー(市区町村が交付)を取得しているトラクターは、売却時に廃車申告が必要です。放置すると軽自動車税(種別割)が課税され続けます。
補助金を受けた機械は要確認
国や自治体の補助金を使って導入した農機具は、処分制限期間(財産処分の制限)が設定されている場合があります。期間内に売却・譲渡すると、補助金の返還や事前承認が必要になることがあるため、導入時の書類を確認するか、交付元の窓口に相談してください。これは買取業者では判断できない領域です。
よくある質問
Q. 何年落ちまで売れますか?
明確な線引きはありません。当サイトの集計では中古農業トラクターの平均輸出単価は36万円で、20年以上前の機械も輸出市場に流れています。年式より、動くか・部品が揃っているか・メーカーが何かが効きます。
Q. 倉庫の奥にあって出せません。引き取ってもらえますか?
多くの業者が対応します。ただし搬出経路(農道の幅、倉庫の間口、フォークリフトが入れるか)で作業内容が変わるため、写真を送って事前に相談してください。
Q. アタッチメント(ロータリーなど)だけでも売れますか?
売れます。作業機単体の需要もあります。ただし本体と同時の方が高くなりやすいのは本文のとおりです。
Q. JAに「値段はつかない」と言われました。本当ですか?
JAや農機店の査定は国内の中古流通が前提です。海外販路を持つ業者では評価が変わることがあるため、別の業者にも査定を依頼する価値があります。
Q. 相続した農機具の名義が父のままです
ナンバーのない農機具は動産として扱われるため、相続人の合意があれば売却できるのが一般的です。ナンバー付きの場合は名義変更・廃車の手続きが必要になります。必要書類は業者が案内してくれます。
Q. 複数台まとめて売ると高くなりますか?
台数効果で引取コストが下がるぶん、条件が良くなることがあります。トラック・重機も一緒に処分する場合は、全機種対応の業者に一括で相談するのが効率的です。
まとめ
- 農機具の売り先は「JA・農機店の下取り」「専門買取業者」「一括査定」の3択。買い替え同時ならJA、処分単独なら買取業者が有利になりやすい
- 日本の中古農業トラクターは年53,911台・194億円が輸出されており、輸出先はベトナムに次いでポーランド・ブルガリア・オランダ・フランスなど欧州が並ぶ
- 国内需要は縮小しているが海外需要は健在。だから海外販路を持つ業者かどうかで査定額が変わる
- 動かない・壊れた農機具も、部品取り・輸出・資源価値で買取対象になりうる
- 補助金を使って導入した機械は、処分制限期間の確認が必要
まずは型式とアワーメーターを控えて、一括査定で複数社の初期提示を集めるところから始めてください。
この記事のデータについて
- 輸出統計: 財務省貿易統計・品別国別表(2025年・統計品目8701.91-110/8701.92-110/8701.93-110/8701.94-110/8701.95-110=中古の農業用トラクター)を当サイトが集計。平均単価は金額÷台数で算出しています。集計手順は調査方法で開示しています
- 買取相場: 買取各社が公開する相場情報(2026年8月時点)の突合せによる目安で、個別の査定額を保証するものではありません
- 補助金の処分制限、相続手続き、税務の個別判断は、交付元窓口・専門家の領域です。当サイトは制度の枠組みのみを示しています
- 業者情報: 各社公式サイトの記載を当サイトが確認したものです(16社の全項目比較)
- 調査・執筆: トラック買取ナビ編集部(運営者情報・掲載基準)