トラクターの買取価格は、馬力とアワーメーター(稼働時間)でほぼ桁が決まります。同じ「20年落ちのクボタ」でも、25馬力と50馬力では相場帯が別物になるためです。
そしてもうひとつ、査定額の背景にある数字があります。日本の中古農業トラクターは2025年の1年間に53,911台が輸出され、その平均単価は馬力帯ごとに28万円・51万円・78万円と明確に分かれています(財務省貿易統計を当サイトで集計)。国内で「値がつかない」と言われがちな古い機体の価格を下支えしているのが、この輸出市場です。
この記事では、馬力帯別の相場、メーカーごとの傾向、アワーメーターの見られ方、作業機(アタッチメント)の扱い、動かないトラクターの売却可否までを整理します(農機具全般の売り先の選び方は農機具買取相場と売り先の選び方で解説しています)。
結論: 査定は「馬力×アワーメーター×作業機」で決まる【早見表】
先に結論です。トラクター売却で押さえるべきは次の3点です。
| 判断軸 | 見られ方 |
|---|---|
| 馬力 | 相場の桁を決める。20〜30馬力と50馬力超では別の市場 |
| アワーメーター | 年式より重視される。1,000時間以下は明確なプラス |
| 作業機(ロータリー等) | 装着したまま出すと「すぐ作業に入れる」状態として加点 |
そして売り先の基本方針はこうなります。
| あなたの状況 | 適した売り先 |
|---|---|
| 相場を知りたい/複数社を比べたい | 一括査定(最大5社の見積を1回で) |
| トラック・重機もまとめて処分したい | 全機種対応の業者(トラックファイブなど) |
| 買い替えと同時に処分したい | JA・農機店の下取り(ただし査定は控えめになりやすい) |
トラクターの買取相場【馬力帯別】
トラクターの相場は馬力で層が分かれます。以下は買取各社の公開情報を当サイトで突き合わせた目安です(2026年8月時点)。
| 馬力帯 | 買取相場の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 15〜25馬力(小型) | 数万〜80万円 | 小規模水田、畑作、家庭菜園規模 |
| 25〜40馬力(中型) | 30万〜150万円 | 一般的な稲作・畑作の主力 |
| 40〜60馬力 | 80万〜255万円 | 大規模農家、法人経営 |
| 60馬力超(大型) | 150万円〜 | 大規模畑作、北海道の大区画 |
相場が上下する要素
同じ馬力でも、次の条件で数十万円動きます。
- キャビンの有無: エアコン付きキャビン仕様は、露天(ロプス)仕様より高い
- 四駆かどうか: 四駆が標準的に有利
- アワーメーター: 後述のとおり最重要
- 作業機の有無: ロータリー付きは加点
- メーカー: 国産4社が優位(後述)
馬力帯別の輸出単価が示す「価格の下支え」
ここが他の買取サイトにない視点です。当サイトが財務省貿易統計を集計したところ、中古の農業用トラクターは馬力帯ごとに輸出単価がはっきり分かれています。
| 馬力区分 | 年間輸出台数(2025年) | 平均輸出単価 |
|---|---|---|
| 〜24馬力(18kW以下) | 37,688台 | 28万円 |
| 24〜50馬力(18〜37kW) | 14,294台 | 51万円 |
| 50〜100馬力(37〜75kW) | 1,851台 | 78万円 |
| 100馬力超 | 78台 | − |
| 合計 | 53,911台 | 36万円 |
出典: 財務省貿易統計・品別国別表(2025年・統計品目8701.91-110〜8701.95-110)を当サイト集計
この数字の読み方【上限ではなく「下支え」】
注意したいのは、この輸出単価が平均値であって上限ではないことです。正しい読み方はこうなります。
トラクターの買取価格は、国内で再販したときの価格と、輸出したときの価格の「高い方」で決まります。
- 高年式・低稼働・人気機種: 国内の農家が買い手になるため、国内相場で値がつく。この場合、査定額は輸出単価を大きく上回ります(表の相場帯の上側)
- 古い・過走行・不人気機種: 国内で買い手がつきにくく、輸出向けの評価が中心になる。この場合、輸出単価が価格の目安になります
つまり輸出単価は天井ではなく、「国内で値がつかない機体の、価格の下支え」を示す数字です。25馬力の古い機体で「数万円」と言われたときに、「輸出すれば平均28万円で売れる区分だ」と知っていれば、別の業者にも聞いてみる判断ができます。海外販路を持たない業者は、この下支えを価格に反映できません。
輸出台数の約7割が「24馬力以下」
もう一つ重要なのが台数の分布です。輸出の約7割(37,688台)が24馬力以下の小型機で、日本の小区画農地向けに作られた小型トラクターが海外で最も求められています。
輸出先はベトナムが最多ですが、ポーランド(約4,032台)、ブルガリア(約3,305台)、オランダ(約2,328台)、リトアニア(約2,268台)、フランス(約1,768台)といった欧州が上位に並びます。東欧の小規模農家や、オランダ・フランスの果樹園・施設園芸で、日本の小型トラクターが「ちょうどいいサイズ」として評価されているためです。
つまり「小型で古い」トラクターほど、輸出販路を持つ業者との相性が良いということです。
アワーメーターと年式の見られ方
トラクターの査定では、年式よりアワーメーター(稼働時間)が重視されます。
| アワーメーター | 評価の目安 |
|---|---|
| 〜500時間 | 極めて少ない。高評価 |
| 500〜1,500時間 | 少ない。プラス評価 |
| 1,500〜3,000時間 | 標準的 |
| 3,000〜5,000時間 | 減点が入りはじめる |
| 5,000時間超 | 減点は大きいが、整備履歴があれば値はつく |
農家のトラクターは「年に数十時間しか使わない」ケースも多く、20年前の機体でも稼働1,000時間台ということが珍しくありません。この場合、年式から想像するより高い査定が出ます。
逆に、法人経営や受託作業で使われた機体は稼働が伸びやすく、10年落ちで4,000時間ということもあります。査定を依頼するときは、必ずアワーメーターの数値を伝えてください。年式だけで話すと、実態より低い概算を出されることがあります。
メーカー別の傾向
| メーカー | 傾向 |
|---|---|
| クボタ | 国内シェア最大で海外の知名度も高い。中古市場で最も安定した評価 |
| ヤンマー | 耐久性の評価が高く、小型機の需要が厚い |
| イセキ(井関農機) | 稲作機械に強み。地域によって指名需要がある |
| 三菱マヒンドラ農機 | 流通量は上位3社より少ないが実用需要は同じ |
海外メーカー(ジョンディア、ニューホランドなど)は国内の部品供給網が限られるぶん、査定が抑えめになる傾向があります。
型式は機体の銘板に記載されています。型式・アワーメーター・年式の3点を控えておけば、電話やフォームで概算が出ます。
作業機(アタッチメント)は一緒に出す
トラクターは本体だけでなく、装着する作業機にも中古価値があります。
| 作業機 | 備考 |
|---|---|
| ロータリー | 最も一般的。本体とセットが基本 |
| プラウ・ハロー | 畑作向け。状態次第で加点 |
| 畦塗り機 | 稲作向けで需要がある |
| ブロードキャスター(肥料散布機) | 単体でも需要あり |
| フロントローダー | 装着車は明確にプラス。作業範囲が広がる |
外して別に処分するより、本体と一緒に査定に出す方が総額は上がるのが通例です。「すぐ現場に投入できるセット」として評価されるためです。作業機だけが残っている場合も、単体で買い取る業者があります。
古い・動かないトラクターは売れるのか
結論から言えば、売れる可能性は十分あります。理由は3つです。
- 部品取りの需要: 同じ型式が長期間生産され、現役機が多いため中古部品の需要が絶えません
- 海外では修理して使う: 前述のとおり年5.4万台が輸出されており、日本で「修理費が高い」とされた機体も現地で直されます
- 資源としての価値: 最終的に金属資源の価値が残るため、処分費用を払うより引き取ってもらう側に振れることが多くなります
動かないトラクターを売るときのポイント
- 状態を正直に伝える(エンジン不動、油圧が上がらない、タイヤ劣化など)
- 保管場所と搬出経路を伝える(倉庫の奥、農道のみ等で引取方法が変わります)
- 「動かない機体も買取」と明記している業者を含めて2〜3社に相談する
査定でマイナスになる7つのポイント
査定士が実際に確認している箇所を知っておくと、事前に説明を準備できます。該当しても隠さず伝える方が、後の減額を防げます。
| 確認箇所 | 何を見ているか |
|---|---|
| エンジンのオイル漏れ・にじみ | 修理費が読みにくいため慎重に見られる。にじみ程度なら影響は限定的 |
| 油圧の上がり方 | 作業機を上げ下げして、途中で止まらないか・落ちてこないか |
| PTO(動力取出軸)の作動 | 作業機を動かす心臓部。異音や切れの悪さは減点 |
| 四駆の切り替え | 効かない場合は大きな減点。切り替えレバーの動作を確認される |
| タイヤの残り溝・ひび割れ | 農用タイヤは高額なため、交換が必要だと減額幅が大きい |
| キャビンの雨漏り・エアコン | キャビン仕様は快適装備が価値の一部。エアコン不動は減点 |
| フレーム・ミッションケースの割れ | 構造部の損傷は修復コストが大きく、査定に強く響く |
逆に、ボディの小傷や塗装の色あせは、実用機であるトラクターではほとんど影響しません。板金や再塗装をしてから売るのは費用倒れになるのが通例です。
トラクターの「売り時」はいつか
農家からよく聞かれるのが売却のタイミングです。判断材料は3つあります。
1. 使わなくなった時点が最も高い
放置している間に、バッテリーの放電、タイヤのひび割れ、油圧シールの劣化、燃料系の詰まりが進みます。自走できる状態と動かない状態では、引取方法も査定額も変わります。「そのうち」ではなく、使わないと決めた時点で査定を取るのが最も有利です。
2. 買い替えを予定しているなら、納車前に査定を取る
JAや農機店の下取り額を先に聞き、そのうえで買取業者の査定も取ると比較ができます。下取りは値引きと一体で提示されることが多いため、「下取りなし・値引きのみ」の条件も出してもらうと金額が見えやすくなります。
3. 需要期(作付け前)は買い手が増える
春の作付け前と秋の作業前は、中古機を探す買い手が増える時期です。数か月の猶予があるなら、この時期に合わせる価値があります。
買取業者の選び方と対応業者
選び方の3基準
- 海外販路を持つか——古い小型機ほど、輸出できる業者との差が出ます
- 不動車・部品取りに対応するか
- 出張査定・引取が無料か——農村部では引取コストが査定に影響します
対応する主な業者
| 業者 | 特徴 |
|---|---|
| 農機具買取査定君 | 最大5社の一括見積。全国対応。まず相場を知りたい段階に向く |
| トラックファイブ | トラック・重機・バス・農機具まで全機種対応。全国11支店・最短当日現金 |
| 農機具専門店(農機具王・農機具高く売れるドットコム等) | 農機具に特化。機種別の買取実績が豊富 |
| JA・農機店 | 買い替えと同時なら手続きが最短 |
当サイトが公式情報を実測したトラック・重機系16社のうち、農機具まで対応するのはトラックファイブのみでした。トラクター単体なら農機具専門業者、他の機械も一緒なら全機種対応業者、という使い分けが実務的です。
トラクターを高く売る7つのコツ
コツ1: 作付け前の需要期に売る
春(2〜4月)と秋の作業前は、すぐ使える中古機を探す買い手が増えます。売ると決めたら、この時期に合わせると有利です。
コツ2: アワーメーターの数値を先に伝える
前述のとおり査定の中心軸です。写真を撮って共有すると、電話だけで精度の高い概算が出ます。
コツ3: 作業機・付属品をまとめて出す
ロータリー、フロントローダー、その他の作業機は本体と同時に。取扱説明書や整備記録も揃えてください。
コツ4: 洗浄はする、修理はしない
泥を落として機体の状態が見えるようにするのは効果があります。一方でエンジン・油圧の修理費は査定の上昇分を上回るのが通例です。
コツ5: 整備記録を揃える
定期的なオイル交換や修理の履歴は「管理されていた機体」の証明になります。
コツ6: 倉庫の他の農機具も一緒に見てもらう
管理機・草刈機・田植機なども同時に出せば、引取コストが分散されて全体の条件が良くなります(農機具買取の記事で詳しく解説しています)。
コツ7: 海外販路の有無で業者を比べる
古い機体ほど、業者の販路で査定額が開きます。一括査定で複数社の初期提示を集めるのが効率的です。
手続きと注意点
ナンバーの有無で手続きが変わる
公道を走るために小型特殊自動車のナンバー(市区町村が交付)を取得しているトラクターは、売却時に廃車申告が必要です。手続きをしないと軽自動車税(種別割)が課税され続けます。
農地・構内でのみ使用しているナンバーなしの機体は、動産の譲渡として譲渡証明書と印鑑で完了します。
補助金で導入した機械は要確認
国や自治体の補助金を使って導入した農機具には、処分制限期間(財産処分の制限)が設定されている場合があります。期間内の売却・譲渡には事前承認や補助金の返還が必要になることがあるため、導入時の書類を確認するか交付元の窓口に相談してください。買取業者では判断できない領域です。
相続した機体の名義
名義が故人のままでも、ナンバーのない農機具は相続人の合意で売却できるのが一般的です。ナンバー付きの場合は名義変更・廃車の手続きが必要になります。
よくある質問
Q. 30年前のトラクターでも売れますか?
動く状態であれば可能性は十分あります。当サイトの集計では中古農業トラクターが年53,911台輸出されており、古い小型機ほど海外需要が厚い構造です。年式よりアワーメーターと動作状態が重視されます。
Q. アワーメーターが壊れて動いていません
正直に伝えてください。稼働時間が不明な場合、業者は年式と機体の状態から推定します。隠して後から発覚すると減額の理由になります。
Q. ロータリーだけ売れますか?
作業機単体の買取に対応する業者があります。ただし本体と同時の方が総額は上がりやすいのが実情です。
Q. JAに下取りを頼むのと、買取業者に売るのはどちらが得ですか?
買い替えと同時ならJAの下取りが手軽ですが、処分単独なら買取業者の方が有利になりやすい構造です(海外販路の有無が理由)。詳しくは農機具買取の記事のJA比較で解説しています。
Q. 査定は無料ですか?
主要な業者は出張査定・引取ともに無料を掲げています。金額に納得できなければ断ることもできます。
まとめ
- トラクターの査定は「馬力 × アワーメーター × 作業機」で決まる
- 馬力帯別の輸出単価は28万円・51万円・78万円(〜24馬力/24〜50馬力/50〜100馬力)。これは上限ではなく、国内で値がつかない機体の価格の下支えを示す数字
- 輸出の約7割(37,688台)が24馬力以下の小型機。小型で古い機体ほど、輸出販路のある業者と相性が良い
- アワーメーターは年式より重視される。1,000時間台なら20年落ちでも評価される
- 作業機は装着したまま査定へ。補助金導入機は処分制限の確認を
まずは型式とアワーメーターを控えて、複数社の査定を比べるところから始めてください。
この記事のデータについて
- 輸出統計: 財務省貿易統計・品別国別表(2025年・統計品目8701.91-110〜8701.95-110=中古の農業用トラクター)を当サイトが集計。平均単価は金額÷台数で算出しています。集計手順は調査方法で開示しています
- 買取相場: 買取各社が公開する相場情報(2026年8月時点)の突合せによる目安で、個別の査定額を保証するものではありません
- 補助金の処分制限・相続手続きの個別判断は、交付元窓口・専門家の領域です
- 調査・執筆: トラック買取ナビ編集部(運営者情報・掲載基準)